ミルクティーの音色



先生と屋上で話した後、私はしっかり授業に出た。


音楽の授業中、渋谷先生はよく私を見ていた。
監視官みたいな視線だったから、思わず睨み返したら笑っていた。


他の教科の先生には驚かれた。
「佐々木が授業に出るなんて珍しいな」と言って笑われた。


普段使っていないエネルギーを使ったからか、今日は一段と疲れた。
帰りのホームルームで長いこと喋る担任の話を聞き流しながら、私は渋谷先生のことを思い出していた。


『佐々木さんの人生の意味に、俺がなってあげるから』


今日一日、ずっとその言葉が頭の中で反芻(はんすう)している。
先生の温もりと、透き通った声ばかり思い出してしまう。


気づけばホームルームは終わっていて、辺りは騒がしくなっていた。
みんなそれぞれの友達と放課後の予定を相談している。
私は、ひとり。


適当に教科書やらノートやらを突っ込んで、足早に教室を出た。
ひとりでいるのは嫌いだ。
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