ミルクティーの音色
重なった手を、ぎゅっと握った。
包み込むように、やさしく。


「先生」

「なに?」


そう言う先生の声は震えている。
涙を必死に堪えて、なんとか作った笑みを浮かべているんだろう。


泣いてもいいんですよ、先生。
その涙の理由は、きっと私だから。
理由を私に押し付けて、わんわん泣きわめいたっていいです。
泣けるときに、泣けばいい。


「私も、先生がいないとだめかもです」


少し引っ込みかけていた涙が、また瞳に溜まっていく。
渋谷先生の口角が少しずつ上がる。
瞳に涙を浮かべたまま、渋谷先生は笑った。


先程の泣き笑いとは全く違う表情。
涙を浮かべて笑う。それは同じなのに、涙の理由がさっきとは違うんだろう。


「今日、夢を見ました。渋谷先生が、私を捨てていっちゃう夢を」

「そんなこと、しないよ」

「分かってます。途中から夢だって気づきました。先生の目に、光が灯ってなかったから」


渋谷先生と目を合わせる。
瞳にはゆらゆらと光が映っている。
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