ミルクティーの音色
嫌でも孤独を感じることになる。
ひとりでいられないのが人間なのに、ひとりになってしまう人間は必ずいる。


どうしてなんだろう。
教室という一つの箱の中で、どうして私はあふれてしまうんだろう。


前から歩いてきた男子生徒とぶつかり、舌打ちされる。
ぶつかった拍子に鞄の中から教科書が落ちた。


しゃがんでそれを拾う。
周りの人が刺すような視線で私を見つめている。


あぁ、またやってしまった。
早くここから立ち去りたい。
この視線から、今すぐに逃れたい───


「大丈夫?」


左側から白くて細い、でも男らしい手が伸びてきた。
声と匂いで、すぐに分かった。


「……渋谷先生」


渋谷先生は落ちていた教科書を全て拾うと、手に抱えたまま私を引っ張った。
向かっていた玄関の方向とは正反対に引っ張られて、私は困惑の表情を浮かべる。


「ちょっと先生、どこ向かってるんですか」

「どこだっていいでしょ別に」
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