ミルクティーの音色
「ねぇ、佐々木さん」

「なんですか」

「今日、家来ない?」


突然のお誘いに、驚いて身体を離した。
渋谷先生は私の身体に腕を回しながら、照れ笑いを浮かべている。


「ごめん、無理だったらいいんだけど。一緒にいたくて」


返事をする代わりに、もう一度渋谷先生に抱きついた。
私の意図を理解したのか、頭を撫でられる。


「明日土曜で休みだね。泊まってく?」

「言われなくてもそのつもりです」


私たちは笑い合った。
少しずつ生まれ始めている影のことなど、露知らず。


< 111 / 214 >

この作品をシェア

pagetop