ミルクティーの音色
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「ごめん、遅くなった」
そう言いながら車のドアの鍵を開けた。
助手席にレジ袋やらボストンバッグやらを持った佐々木さんが乗り込む。
「いいですよ、待ったのちょっとなので。お菓子とか飲み物とか買えましたし」
佐々木さんがレジ袋を掲げながらシートベルトをつける。
それを確認して車を発進させた。
学校から直で俺の家に行ってもいいのだけれど、やはり人の目がある。
だからスーパーの駐車場で待ち合わせ、今こうして家に向かっているというわけだ。
「なんか楽しかったです。待ってるとき」
「楽しい?」
「いけないことしてるみたいな、ハラハラする感じって言うんですかね。スリルがあって楽しいです」
交差点でハンドルを切り、右に曲がった。
前方に俺が住むマンションが見えてくる。
「先生のお家に行くの、久しぶりな気がします。二週間ぶりくらい?」
「そうだね、付き合った日からでしょ?え、まだ二週間しか経ってないんだ」
「びっくりですよね。もっと前から一緒にいる気がします。あ、でも、一緒にいるったら一緒にいるのか」