ミルクティーの音色
他の人からしたら幸せでもなんとも無いのかもしれない。
ただの日常の一コマかもしれない。


それでも、今まで幸せを背負ってこなかった俺たちにとっては、ただの一コマが愛おしくて仕方ない。


他愛ない日常の一コマを、一ページを、擦り切れるほどに愛していたい。
その擦り減った重さごと、包み込みたい。


話しながら食べていればあっという間にパックが空になった。
この間も思ったけれど、佐々木さんって案外よく食べるんだな。


「ふー、美味しかった。ごちそうさまでした」

「ごちそうさま。佐々木さん、ほんとよく食べるよね」

「そうですか?大食いって言われたことはないですけど。先生と食べるご飯が美味しいからですかね」


つい最近鈍感だとか言われたけれど、佐々木さんはかなりの無自覚だと思う。
なんの自覚もなくそういう台詞を言ってくるところとか。
俺が苦しくなるからやめてほしい。無自覚だから悪びれてこないのが困る。


「あ、お風呂沸いてるよ。入る?」

「じゃあ、一番風呂失礼します。先生、お風呂上がったら一緒にアイス食べましょうね」
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