ミルクティーの音色
これまた可愛い台詞を残して風呂場へと消えていった。
突然ひとりになると、自分が道を踏み外しすぎていると思った。


分かっている。
『佐々木さんの生きる意味に、俺がなってあげるから』
そう言った瞬間から、俺は走っていた人生のレールを外れた。


他人の手によって道を外れたわけじゃない。
自分で、進みたい方向に向かってハンドルを切ったのだ。


後悔はしていない。
していないのだけれど、時々不安になる。
佐々木さんと一緒にいていいのだろうか。
本来なら歩かなかったであろう暗い道に、俺が佐々木さんを引きずり込んでしまったのではないか。


どれだけ考え込んでも仕方が無いのだけれど、孤独というものは人を饒舌にさせる。
自分自身を苛んだところで何も変わらない。
どうしようもないほどの自責の念に駆られ、それを少しでもかき消そうとテレビをつけた。


テレビをつけたものの音が小さく、何も聞こえてこない。
聞こえてくるのはシャワーの音だけ。
それも止まり、ドアが開く音が聞こえてくる。
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