ミルクティーの音色
そうだよ、と返しながら立ち上がり、冷蔵庫に入った炭酸飲料を二本取った。
一本を佐々木さんに渡し、もう一本の蓋を開ける。
ぷしゅっと爽やかな音と水滴が飛ぶ。
喉に流せば炭酸の痺れが残る。


「じゃあ、蒼真くん、で。どう?」

「……ごめん、破壊力」


想定していたよりも、かなり破壊力が強かった。
甘えるように佐々木さんの肩に顔を乗せると、小さい手のひらが頭に触れた。
やさしく撫でられる。
子供みたいだけど、少しくらい子供に戻ったっていいだろう。


「蒼真くんも、私のこと佐々木さんって呼ぶのやめてよ。私だけっていうのも変じゃない?」

「そう?」

「変だよ。それに、私だって下の名前で呼ばれたいし」


お互いのための提案かと思ったが、個人的な欲求が含まれていたようだ。
佐々木さんも喉が渇いたのか、炭酸飲料に口をつけた。
一口飲んで息をつく。


「なに、意地でも呼んでくれないの?」

「え?違う、どう呼ぼうかなって考えてただけ。香音って呼ぶか、香音ちゃんにするか」

「香音にして。香音ちゃんはばかにされてる気がする」
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