ミルクティーの音色
入り口付近で立ち止まっていた私に近づくと、渋谷先生は言った。


「今日、言ったよね、俺。佐々木さんの、生きる意味になるって」


本気、だったのか。
私は嘘だと思っていたのに、からかわれているだけかと思っていたのに、目の前にいる渋谷先生は真剣な目をしている。


焦げたような、茶色。
その瞳に見つめられてしまうと、私はなにも出来なくなる。


「……本気、だったんですか」

「言ったじゃん。俺、嘘はつかないって。で、どう?」

「どう、って」


人生への希望なんて、とうに捨てた。
何を頑張っても私には出来ないことの方が多かったし、やる意味なんてないと思った。


もういっそ、いいのか。
人生なんて意味がないと思っているからこそ、今、この人の手を取るのもありなんじゃないか。


飛びたくなったら、飛べば良い。
飛ぶまで、この人に支えて貰えば良い。


「……渋谷先生」

「なに」


私は小さく息を吐いた。
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