ミルクティーの音色
上手く言えないことだけが確かだった。
私はその時、確かになにかに傷ついた。


周りからしたらきっと、絆創膏を貼る程度の傷だろう。
心が割れている私にとっては、包帯でぐるぐる巻きにしないといけないような傷だった。


傷ついた心を抱えながら、私は空を見上げた。


『ねぇ、お母さん』

『なによもう。あんたのせいで急いで出てこなきゃになったんだけど』

『空、汚いね』


視界いっぱいに広がった空は、どんよりと黒く曇って、大粒の雨を降らせていた。
汚いと言いながら感じた。
この世で一番汚いであろうものは、私だろうと。


理不尽な理由を突きつけて、自分を正当化して、生きている。
そんな自分が、誰よりも、何よりも。醜いのだろうと。


『はぁ?何言ってんの、空なんてどうでもいいでしょ。ほら、早く行くよ』


先程は担任に引っ張られたが、今度は母親に引っ張られた。
相変わらず強すぎる力に顔をしかめながら、私は歩いた。


もう一度だけ、私は顔を上げた。
少しだけ薄めた黒色をべたべたと塗りつけたような空。
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