ミルクティーの音色
「そんなことはないんじゃない?俺は、違うと思うけど」

「え?」

「香音は強いでしょ。何度も何度も死にたいって思ってんのに、負けずに生きてる。それに、助けてって言えたじゃん」


蒼真くんの台詞に、自嘲気味な笑みがこぼれた。
何もこの世界に負けずに生きてきたわけじゃない。
何度も何度も、飛ぼうとした。飛ぼうとしては怖くなって、飛べていないだけ。


死ぬ機会を逃した、ただの死に損ないだ。


「強いかなぁ。ただ、死に損ないみたいなもんだし。それに、自分から助けてなんて言えてないよ。蒼真くんが、生きる意味になるって言ってくれただけ」

「いいんだよ、それで。目の前に垂らされた救いの手を、掴めるかどうかが大事でしょ。自分の弱さを認めて、人に縋れるか」


やっぱり、不思議だ。
蒼真くんが言うと、すべてが正解のように聞こえる。


中学生の頃、担任の先生の言葉は、私になにひとつ響かなかった。
高校生の私に、蒼真くんの言葉は、すっと入り込んできた。


「……いいのかな、弱くても」
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