ミルクティーの音色
「蒼真くんがいるなら、生きてみようかなって思える。空に飛ぶのは、もうちょっと先でいい」


そう話す私の声は、震えていた。
生きてみようかと宣言したくせに、怖いんだ。
知らないうちに潤んでいた瞳は、大粒の涙を落とした。


頬を濡らす涙を、手の甲で拭ってみる。
溢れた涙は、あつい。私はその温度を、確かに知っていた。


「じゃあ俺、長生きしなきゃだね。香音より長く生きなきゃ」

「それは無理じゃない?」

「いちいちうるさいな」

「そっちが言ってきたくせに」


指先が絡まる。
一緒に生きたいと思う人が、大切な人が、隣にいる。
私の名前を呼んで、手を繋いで、抱きしめてくれる。


───そのうちは、生きていたい。


早朝の屋上。
真っ赤な太陽が空を押しやって、少しずつ姿を現していく。


私たちはふたりで、それを見つめ続けていた。


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