ミルクティーの音色
特に用事も無いし、断る理由もない。


「いいよ、なにする?」

「一緒にいれるならなんでも」


これまた嬉しい台詞を。
お互いに携帯を取り出し、予定があるか確認をする。


「この日、お祭りがあるみたいです。どうです?」


香音が携帯の画面を見せてきた。
幾つも並んだ日付の数字と、その下には予定やらなんやらを書き込める欄。
八月も中盤の方に『お祭り』とかなりポップな字で刻まれていた。


俺も自分の携帯に目を落とす。
なにも記入されていないスケジュールアプリは、ぺらりと白い。
仕事があれば出張や会議といった文字が刻まれるのだけれど、それすらなくなる夏休みはなにも書くことがないのだ。


「俺はいいけど、いいの?その、人の目とか」

「いいです。まぁ、そんときはそんときですし。偶然会ったとでも言って誤魔化しましょう」


最初(ハナ)からしらばっくれるつもりでいるらしい。
あれほどバレるのが嫌だとかほざいていたくせに、夏休みとでもなると羽目を外したくなるのだろうか。
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