ミルクティーの音色
なにも言えず、視線だけを泳がせていると、町田先生が顔を近づけてきた。
目の前に町田先生の綺麗な顔がある。
彼女のことを好きで堪らない男子生徒なら、今すぐに叫び出しそうな距離だろう。


「……町田先生」

「わたしじゃ、だめですか」


なにかが唇にぶつかった。
やわらかくて、あたたかいなにかが。
息が出来なくなるような、なにかが。


そのなにかが町田先生の唇であると理解した俺は、反射的に彼女の身体を押した。
町田先生は、いつも通り柔らかい笑みを浮かべている。


俺は手の甲で唇を拭った。
まるで汚いものをそぎ落とすみたいに。
ゴシゴシと、強く。


「町田先生、なにして……ここ学校ですよ」

「それはこっちの台詞です!」


急に町田先生が声を荒げる。
さっきまで微笑みを浮かべていた顔は、軽蔑の色に染まっている。


「なんでしらばっくれるんですか。なんで隠すんですか。そんなことしたって、どうにもならないんですよ」

「町田先生、なにを……」
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