ミルクティーの音色
大きな瞳から、涙が一滴こぼれた。
黒椅子に座り、俺を見つめている町田先生は、泣いていた。
しかし俺は、その涙の理由を掴めそうにない。


「知ってるんですよ。わたし。渋谷先生が、ここでなにしてるのか」


さーっと血の気が引いていくのが分かった。
顔に軽蔑の色を浮かべていたのはそういうことか。
そう思っていると、町田先生の顔が耳元に近づいた。


「付き合ってるんですか?佐々木さんと」


耳元で、ねっとりと、甘く艶やかにささやかれる。
細い指は俺の太ももを撫でている。まるで別世界へと誘うように。
ただ俺の身体からは冷や汗が噴き出すばかりで、とても興奮なんてしやしない。


そうして数分間が経ち、やがて町田先生の身体が離れた。
瞳にはありありと失望の色が見える。


「沈黙は肯定と一緒ですよ、渋谷先生」


固まってしまった俺を横目に町田先生が立ち上がり、荷物を持って去って行く。
部屋を出ようとした瞬間、思い出したように振り向いた。
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