ミルクティーの音色
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「先生」
「なに、また来たの?」
「来ていいって言ったの先生ですよね」
後ろ手でドアを閉め、私はピアノ近くの机に荷物を置いた。
「来るのはいいけど、構ってあげられないんだって」
「それでいいって言ってるじゃないですか」
放課後の一時間、私は毎日この音楽室に入り浸っている。
きっかけは一週間前。
いつも通りひとりで帰ろうとしていると、どこからかピアノの音が聞こえてきた。
軽やかなメロディー。それがガラッと変わって、しっとりとした質感になっていく。
気づけば私は、音楽室に向かって歩き出していた。
音楽は不思議だ。
いやまぁ、正確に言えば、あの人が紡ぐ音楽が。
私の身体を、こんなにも力強く動かしている。
ピアノの音がする音楽室を覗き込むと、ひとりピアノに向き合っている渋谷先生がいた。
ドアが開いているから音がはっきり聞こえるし、渋谷先生の笑顔もよく見える。