ミルクティーの音色
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「佐々木さん」
ついに夏休みが迫った、一学期最後の登校日。
終業式が終わり、いつも通り長い担任の話を聞き、挨拶と同時に教室を飛び出していく生徒たち。
相変わらず元気だな、夏休みが楽しみで堪らないのかな、まぁそれは私も同じだけど。
そう思いながら教室を出た瞬間、後ろから誰かに呼び止められた。
いつもと呼び方は違うけれど、誰なのか分かる。
大切な、大好きな人。
「渋谷先生」
そう言いながら振り向いて、驚いた。
───どうしてそんな、暗い顔を?
私が、初めて見る顔だった。
暗くて、なにか口にしてはいけない秘密を抱えているような、そんな顔。
なにが蒼真くんにそんな顔をさせたのだろう。
どこの誰かも知らない人間に、腹が立つ。
「ちょっといい?授業のことで、話が」
「はい、わかりました」
授業の話ではないことも、もう理解している。
単純に授業の話をするだけなのであれば、こんなにも暗い表情を浮かべる必要は無いのだから。