ミルクティーの音色
今日だけは、蒼真くんの言うことであろうと聞かないことにした。
私は手を離さず、まだほっぺをつねっている。


「蒼真くんが今泣いてるのは、私がほっぺつねってるから。泣いてるのは、私のせい」


蒼真くんが私を見た。
涙が一粒こぼれて、ほっぺに触れている私の指に落ちる。


ずっと、思っていたんだ。
蒼真くんには言っていなかったけど、ずっと思っていたことがある。
もし、蒼真くんが泣きたいときがあるなら。
その涙の理由に、私はなりたい。


理由を全部、私に押し付けて欲しい。
そんなのおこがましいかもしれない。蒼真くんは断るかもしれない。
でも、蒼真くんが安心してくれるような存在に、私はなりたいのだ。


「……なに、それ。ほんと意味分かんない」


鼻をすすりながら、蒼真くんが笑った。
私の手をどけ、深呼吸をすると、真剣な顔で話し始めた。


「バレたかも、しれなくて。他の先生に、俺たちの関係が」
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