ミルクティーの音色
一年に一度しかないお祭りだ、気合いも入るだろう。


私の場合、お祭りだから気合いが入っているわけではないのだろうけど。


アイシャドウを瞼に乗せていると、携帯が震えた。
蒼真くんからの着信だ。


『もしもし』

「どうしたの?」

『なにしてんのかなって思ったの』


蒼真くんと電話をするのは久しぶりな気がする。
いつもより低く聞こえる声に、左胸の辺りが騒がしくなる。


「今は支度してた」

『もう?早くない?』

「乙女は時間がかかるの」


電話の向こうで蒼真くんが笑った。
集合時間と場所を確認し、通話が切れる。


私はメイクブラシを持ち替え、瞼に大粒のラメを乗せた。
閉じた瞼をゆっくりと開けば、黒目の上に、小さな花火が煌めいているようだった。


アイラインを引いて、じゅわっとした赤いチークを頬に乗せて。
仕上げにピンク色のリップを塗れば、ぱっと顔に花が咲く。


「よし、完璧」
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