ミルクティーの音色
ハンガーにかけられた、煌びやかな浴衣と見つめ合う。
赤い椿が、漆黒の布地に鮮やかに咲き誇っている。
滴り落ちる滴のようにスパンコールが煌めき、夜の闇の中でも美しく光るのだろうと思う。


太ももに触れた手が、ピアノの鍵盤を押すように動いた。
最近は自然と、指先が動いてしまう。


部屋の隅にある机の上に置かれた、電子ピアノに触れる。
妹の遥が使わなくなったものを、最近この部屋に運び込んだのだ。


電源を入れ、鍵盤に指を乗せる。
ポロン、と軽やかな音が響いた。


髪のセットは美容院でしてもらうから、あとは浴衣を着ればいいだけ。
まだまだ時間はある。
少しだけ弾こうと、私は椅子に腰を下ろした。


蒼真くんがくれた楽譜を見ながら、少しずつ弾いていく。
最初は黒点が大量に並んだ楽譜を見てもなにひとつ分からなかったけど、今は理解できるようになった。


ひとつひとつの音を、丁寧に紡いでいく。
美しいメロディーが浮かび上がって、私の中を駆け巡る。
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