ミルクティーの音色
私が弾いていた曲が終わってしまい、どんよりと暗闇に沈んでいくような感覚がする。
またなにか弾き始めようかと思ったけれど、時計を見たら美容院を予約した時間が迫っていた。


電子ピアノから離れ、浴衣を手に取る。
携帯で浴衣の着付け方を検索し、動画を流しながら着付けを始めた。
動画は私のような初心者にもわかりやすく説明していて、少し時間はかかったもののひとりで着ることが出来た。


鏡の前に立ち、全身を映す。
まだなにもしていない髪の毛がぼさぼさなところだけが残念だけど、それ以外はすべて綺麗だ。


そのまま浴衣姿の自分に見惚れたり、携帯をいじったりしていると瞬く間に時間が過ぎた。
髪に櫛をさっと通し、小ぶりな鞄を持って家を出た。


眩しすぎる日の光が、私を照らす。
美容院へと向かう私の足取りは、心なしか軽かった。


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