ミルクティーの音色
香音がまじまじと俺を見つめている。
やっぱり浴衣、似合っていなかったかな。


自分で着付けをしたのだけれど、着終えて鏡を見た瞬間、あまりの違和感に笑ってしまった。
特別似合わないというわけではなかったのだけれど、とにかく違和感が拭えなかったのだ。


「やっぱ似合ってない?浴衣」

「そんなことないよ、すっごく似合ってる。かっこよくて見惚れちゃった」


今度は俺の頬が赤く染まる。
好きな子に、ましてや浴衣姿だというのに、かっこいいなんて言われて照れない男がいるのだろうか。


「ねぇ、私はどう?なんか変な感じがするんだけど」

「変な感じってなに?」

「なんか歩きにくい」

「浴衣ってそういうもんだよ」

「えぇ」


香音が身体を寄せてくる。
以前の俺なら自然な動きでかわしていただろうけど、もうしない。


香音の左手が俺の右手に触れ、自然と指が絡まる。
幸せそうな顔をして笑う彼女の手を、力を込めて握った。
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