ミルクティーの音色
「あ、感想聞いてないじゃん。浴衣似合ってるかどうか教えてよ」

「似合ってるよ。可愛い」

「なんか適当じゃない?」

「適当じゃない。こういう台詞慣れてないんだよ」


屋台が沢山並ぶ道に、足を踏み入れた。
がやがやとしていて騒がしい。だからふたりして声を張り上げる。


「ねぇ、あれ食べたい!」

「どれ?」

「あれ!りんご飴!」


香音が指差したりんご飴が並ぶ屋台へ行き、りんご飴とイチゴ飴を一本ずつ買った。
隣で財布を出そうとしていたけど、手で制した。
少しくらい、かっこつけさせてよ。


赤くて艶を帯びたりんご飴を手にはしゃぐ香音。
近くのベンチに腰掛け、一口食べて、おいしいと目を輝かせていた。
俺もイチゴ飴を一口食べる。
あれほど気にしないと決めたのに、やっぱり少しだけ周りの視線が気になってしまう。


きゃっきゃと笑っている声が、すべて俺に向いているのではないかと思う。
いくつもの視線が、俺を軽蔑的に見つめているのではないかと思う。
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