ミルクティーの音色
暗い道に足を踏み入れると決めたはずなのに、俺は怯えてしまっている。
一歩踏み出して見てしまった、進む道の暗さに。果てしない、深さに。


「蒼真くん」


はっと香音の方を見ると、手に持ったりんご飴を俺の方に差し出していた。


「イチゴ飴も食べたい」

「あぁうん、ごめん」


イチゴ飴を手渡し、反対にりんご飴を受け取る。
ぱりぱりと音を立てて、香音がイチゴ飴を食べている。
俺はりんご飴を食べる気になれず、手に持ったまま眺めていた。


「なんかね、時々思うんだよね」


イチゴ飴を手に、星が浮かぶ夜空を見上げながら香音が言った。


「辛いことがあっても、苦しいことがあっても、ふたりなら大丈夫だろうなって。だってこのイチゴ飴みたいに、ふたりで分け合いっこできる」


ゆっくりと手を動かし、りんご飴をかじった。
周りについた飴の甘さと、りんごの爽やかさが絶妙なハーモニーを奏でている。
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