ミルクティーの音色
わくわくが止まらなくて、ずっと、弾いていたくなるような───。


私が先に鍵盤を叩き、美しい旋律に蒼真くんを誘い込んだ。
私のお誘いにすぐに乗ってくれて、楽しそうにピアノを弾き始める。


夏休み中に必死に練習して弾けるようになった曲だからところどころ間違えて、音が外れると蒼真くんが微笑んでくる。
なんだかちょっと馬鹿にされたような気がして腹が立って、右肘で軽く身体をつついてやった。


同じように蒼真くんもやり返してくるから、くすぐったくなって笑ってしまった。
ピアノを弾く手が一瞬止まって、その隙に蒼真くんがメロディーを弾き始める。


私がリードしていたのに、あっという間に蒼真くんのペースに持って行かれてしまった。
口をとがらせながらもまた弾き始め、大胆にアレンジを加えていく。


時々肘でつつき合ったり、笑ったりしながらも弾き続け、曲が終わった。


終わったと同時に私は蒼真くんにもたれ、声を上げて笑った。
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