ミルクティーの音色
それだけが、私の望みで、願いだ。


コンコン、と二回ノックが鳴った。
誰が来たか知ってる?と蒼真くんに視線で問われ、首を横に振る。
約束をするような友達はいないし、先生とも会話なんか交わしていない。


「はーい」と蒼真くんが少し強張った声で答え、ドアの方に歩いて行った。
蒼真くんと共に音楽室に入ってきたのは───。


綺麗な黒髪を顎のあたりで切りそろえ、微笑みをたたえて立っている、町田先生だった。


「……町田先生?」

「佐々木さんとお話ししたくて。クラスの子に聞いたら、音楽室に向かいましたって言われたから」


背中を冷や汗が伝う。
なにも関係がバレることに怯えているわけではない。
私が怯えていたのは、町田先生の笑顔だった。


いつも廊下ですれ違ったときや、他の生徒に見せている笑顔は、とても明るかった。
同性の私でも美しいと感じるほど、明るくて、美しい笑顔だった。


それなのに。
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