ミルクティーの音色
いやでも、町田先生は私たちに話があるんだろう。
だとしたら、隠し事があるというのは不自然な話だ。


ひとりで悶々と考え事をしている私を見かねたのか、町田先生が話を切り出した。


「渋谷先生、わたしたち教師が大事にしていることはなんですか?」

「え、俺たちが?うーん、生徒の多様性を認めるとかですかね」

「それも大事ですけど。犯してはいけないこと、ありますよね」


ぐいっと町田先生が蒼真くんに顔を寄せた。
思わず椅子から立ち上がってしまい、ガタンと音が響いた。
その音に町田先生が振り返り、またにやりと笑う。


蒼真くんはなにも言わず、ただ床の木目を見つめている。


「渋谷先生、答えてください。簡単ですよね?」


そう問われた蒼真くんは下唇を噛んで、町田先生と見つめ合っている。
言えない。いや、言いたくないのだろう。
その言葉のカードを切った瞬間、私たちの関係は白日の下にさらされる。
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