ミルクティーの音色
「……知ってるんですか」


ぽつりと、こぼした。


「……なにを」


震える声で、町田先生が聞いてくる。
その時、私は分かった。


町田先生も決して、平静ではないのだと。
どこで私たちの関係に気づいたのかは分からないけれど、ルール違反を犯した私たちを前に、平静ではいられないのだと。


町田先生の貼り付けたような笑みの理由も、分かった気がする。
平静ではいられないから、自分を繕うために、笑顔を貼り付けているんだろう。


「町田先生は、どこまで知ってるんですか」


そう問う私の声も、震えていた。
怖くないと思っていたはずなのに、なにも恐れることはないと信じていたのに、私はなにかに怯えている。


「どこまで、か……でもわたし、わりと知ってるんだよ?」


町田先生が泣きそうな、くしゃっとした顔になる。


───どうして、あなたが泣くの?


どちらかと言えば泣くのは私たちなはずで、町田先生が泣く理由はない。
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