ミルクティーの音色
もう一度鍵盤に手をかけると、渋谷先生は私を見た。
「……めっちゃ見るじゃん」
「だめですか?」
だめじゃないけど、と渋谷先生が口をとがらせる。
渋谷先生は鍵盤に視線を落とし、深呼吸をすると旋律を紡ぎ始めた。
あ、これ聞いたことある。
確か、有名な曲。
渋谷先生が生み出す音色が、私を包み込んでいくような気がする。
ふわふわとした高揚感に包まれて、すごく心地がいい。
この美しいメロディーを自分の記憶の中だけに閉じ込めておくのはもったいないような気がして、制服のスカートのポケットに入れた携帯に触れる。
動画を回そうかと思ったけど、やめた。
思い出は思い出のままでいい。
いつしか消えてしまうであろうものを残しておいたら、それが消えたとき悲しくなる。
嫌でもあったことを認識せざるを得なくなる。
だったら、もう、残さない。
スカートから手を出し、私はピアノの音に耳を傾けた。
「……めっちゃ見るじゃん」
「だめですか?」
だめじゃないけど、と渋谷先生が口をとがらせる。
渋谷先生は鍵盤に視線を落とし、深呼吸をすると旋律を紡ぎ始めた。
あ、これ聞いたことある。
確か、有名な曲。
渋谷先生が生み出す音色が、私を包み込んでいくような気がする。
ふわふわとした高揚感に包まれて、すごく心地がいい。
この美しいメロディーを自分の記憶の中だけに閉じ込めておくのはもったいないような気がして、制服のスカートのポケットに入れた携帯に触れる。
動画を回そうかと思ったけど、やめた。
思い出は思い出のままでいい。
いつしか消えてしまうであろうものを残しておいたら、それが消えたとき悲しくなる。
嫌でもあったことを認識せざるを得なくなる。
だったら、もう、残さない。
スカートから手を出し、私はピアノの音に耳を傾けた。