ミルクティーの音色
だけど、浴衣の柄と、手に持ったイチゴ飴とりんご飴が、映っているのは私たちであると語っている。


私たちはあっけにとられ、ただ口を真一文字に結ぶことしかできない。


「これ、渋谷先生と佐々木さんですよね。わたし見てたんですよ。あの日、友達とあの祭りに行ったので」

「いたなら、声かけてくれればよかったのに」

「かけられると思います?」


蒼真くんの投げやりな言葉に、町田先生が苛立ちをぶつける。
町田先生の顔を見て、私は驚いた。


綺麗な瞳に、涙が溜まっていたのだ。
先程も泣きそうな顔になってはいたけれど、今は瞬きひとつしたらこぼれてしまいそうだ。


「声かけられるわけないじゃないですか。かけたとして、どんな顔して話せばいいんですか。わたしだって話しかけようとしましたよ、あの日。近くまで行ったし。でも無理だった」


とうとう町田先生の瞳から涙がこぼれた。
一度決壊してしまえば、涙はとどまることを知らず、ぽたぽたと町田先生の頬を伝って落ちてゆく。
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