ミルクティーの音色
それをぐっと拭い、唾を飲み込み、笑顔を作ると彼女はまた話し始めた。


「本当に近くまで行ったんです。話しかけようと思って。でも無理だった。勇気が出なかった。どうして、あんな───」


町田先生はそこで言葉を切った。
わたしの想像力が乏しいせいか、言葉の続きは予想できない。


立ったままの蒼真くんは私と町田先生を交互に見ては口をぱくぱくさせている。
なにを言ったら良いのか分からないみたいだ。


私も同じで、どんな言葉を町田先生に手渡すべきなのか分からない。
悪いのは私たちであって、今なにかを言ってもすべてが言い訳になってしまうように感じる。


「わたし、すべて言いますから。ふたりのこと」


携帯をきつく握りしめ、私をきっと睨んで、町田先生が言った。
たじろぎもしなかった私を見て、自嘲気味に笑う。


「別にいいの?関係ばらされても。退学になるんだよ?人生めちゃくちゃになるんだよ?」

「はい」


瞬間、町田先生の顔に怒りが滲んだ。
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