ミルクティーの音色
怒りたくもなるだろう。
ルール違反を犯しているくせに、全く悪びれていないのだから。


悪いとは微塵も思わず、社会的に見れば人生が潰れることをマイナズにも思わず、ただ好きな人と一緒にいることだけを望んでいる。
ふたりでいられるのであれば、他のことが蔑ろになろうと構わない。


歪んだ、乱れた思考だ。


「……そっか」


ぽつりと言い残すと、町田先生はふらふらと立ち上がり、ドアの方に向かった。
なにかを言おうとしたのかドアの前で立ち止まったものの、結局なにも言わずに音楽室を出て行く。


その背中がどうにも寂しそうで、なにかを求めているようで、見るに堪えきれず、私は町田先生を追いかけた。


後ろで蒼真くんが私を呼ぶ声が聞こえたけど、今だけは無視させて欲しい。


私が町田先生を追いかけたところでなにも変わらないだろう。
罵られ、罵倒され、誹られるだけ。
それでもよかった。


でも私は、ひとつ聞きたいことがあったのだ。
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