ミルクティーの音色
浮かべていた、涙の理由。
どうして町田先生が泣くのだろう。
どうしてこんなに、私たちのことを見ているのだろう。


視線の先に、町田先生の姿を捉えた。
彼女は廊下の端で座り込み、未だこぼれ続けている涙を拭っていた。


「……町田先生」


私の声にびくりと反応し、顔を上げる。
視線がぶつかるとすぐに顔を膝に埋め、なにやら呟いている。


「……なに」

「聞きたいことがあるんです」


私は町田先生の隣に腰を下ろし、膝を抱えた。
廊下に座るのは汚いかもしれないけど、今はなにも気にならない。


隣に寄ってきた私から逃げるように、町田先生が身を捩る。
しかしどれだけ動いても真横に壁があるせいで逃げられない。
観念したのか、はぁ、とため息をついた。


「なんでさっき、泣きそうだったんですか?町田先生が泣く理由はないじゃないですか」


何人もの生徒が踏みしめ、そのおかげですり切り、薄汚れた床を見つめながら言った。
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