ミルクティーの音色
音楽室に入り、机の上に置きっぱなしになっていたリュックを背負って部屋を出た。


すぐそこに蒼真くんがいて、小さく手を振って背を向ける。
彼はだいぶ憔悴しきった顔をしていた。
そりゃ疲れるだろう。心にかかる負担が大きすぎる。


廊下をたったひとりで歩いていく。
町田先生が私たちの関係を他の人に伝えているのだとしたら、ここを歩くのも今日が最後かもしれない。


そう思うと、なんの変哲もない風景が急に色鮮やかに見えてきた。
窓から見える中庭も、汗を垂らしながら廊下を走る部活生も。
なんともない日常の一ページが、まるで映画やドラマのワンシーンのように思えてくる。


昇降口で靴を履き替え、外に出た。
日差しに目をすがめながら、空を見る。


綿あめのちぎれた破片みたいな雲が、空にいくつも浮いていた。


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