ミルクティーの音色
「今日は話しよ。なんでもいいから」


なんでもいいと言われると、思いつかなくなるのは何故だろう。
私はきょろきょろと辺りを見回し、話題に出来そうなものがないか探してみる。


何度も来て慣れてしまった音楽室には、数人の音楽家の肖像画や、ギターやキーボードが並んでいる。
そこから会話の糸口を見つけられそうにはなくて、お互い黙りこくってしまう。


「じゃあ、俺から質問していい?それとも佐々木さん、話したいことある?」

「いや、浮かばないので大丈夫です。質問どうぞ」


先に口を開いたのは先生だった。
丁度話したいことも浮かばなかったから、渋谷先生に話の主導権を渡すことにした。


渋谷先生は少しだけ考え込むと、綺麗な瞳で私を真っ直ぐ見据えた。


「今も、死にたいって思う?」


予想していなかった方向の質問に、思わずスカートの裾を握りしめた。
さっきまで笑顔で話していて、笑顔で『話しよ』なんて言ってくるから、他愛もないことかと思っていたのに。
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