ミルクティーの音色
もしそれが渋谷先生ではなく、他のものになってしまったとしたら。
なにかしらの生きる理由を、私が見つけてしまったら、きっと渋谷先生は身を引くだろう。


だったら、「思います」と返した方がいいのだろうか。
そしたらきっと、この時間はまだ、続く。
でもそれって、渋谷先生を傷つけてしまうのではなかろうか。


渋谷先生は私の生きる意味になろうとしてくれているのに、その思いを無下にしてしまうような回答なのではないか。


私は一体、どうしたら───。


「正直に言ってよ」


やっぱり先生は、人の心が読めるのかもしれない。


「死にたくてもいいし、死にたくなくてもいい。佐々木さんがもし死にたいって言うんだったら、俺はもっと頑張って生きる意味にならないとだしね」

「じゃあ、正直に言います。死にたいですよ、今も」

「うそ、俺結構いい感じだと思ってたんだけど。まだまだか」


正直なところ、死にたい気持ちは少しばかり軽減されている。
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