ミルクティーの音色
壁が壊されてしまったら、私の心は露わになってしまう。


些細なことで心が傷つき、悲しみ、苦しむ。
嫌だ。傷つきたくない。
傷つくことを恐れて、生きてきたのに。


「またぐるぐる考え込んでる」


大きな手のひらが、私の頭をわしゃわしゃとかいた。
お陰で髪がひどい有様だ。


「佐々木さんの悪いところ、そういうとこだよ。すぐひとりで考え込んで、結論出そうとする」

「だって、それしかないですから」


半ば諦めたような口調で言った。
ずっとそうだった。
ひとりで考え込むしかなかった。


誰も私に手を差し伸べてくれる人なんていない。
助けてくれる人なんて、支えてくれる人なんて、いない。


出口のない暗闇に、ずっと立っているような感覚。
どれだけ足を、手を動かしても、そこから進めることはない。


刻一刻と暗闇は私を侵食していて、後はその闇に呑み込まれて終わるしかない。
光が差すことも、ない。
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