ミルクティーの音色
迷惑だろう。鬱陶しくて仕方ないだろう。
それでも私は、こういう生き方しか知らない。


他人に縋って、しがみついて、迷惑をかけて。
申し訳ないと思う。私の個人的ないざこざに、誰かを巻き込んでしまって。


申し訳ないとは思いつつも、私はどうしたらいいのか分からない。
自分が傷つきたくないから、苦しみたくないから、誰かを巻き込むことでその気持ちを軽減しようとしている。


一方的な、押し付け。
最低なことをして十七年も生きてきた自分を、改めて醜く思った。


「いいよ、それでも。全部包み込んであげるから」


何よりも、私が求めていた言葉だった。
湿り気を含んだ同情ではなく、嫌みを含んだ怒りでもなく、ただ広い海のように私を包み込む、その言葉。


やっぱり、渋谷先生なら。
私の『生きる意味』に、なってくれるのかもしれない───


ふいに、ミルクティーみたいな匂いが鼻をくすぐった。
椅子に座った状態で後ろから渋谷先生に抱きつかれているのだと、理解するまで少しの時間を要した。
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