ミルクティーの音色
もう、潰れたも同然のような日々なのだから。


───渋谷先生に潰されるのなら、本望だ。


「先生に潰されるならいいですよ。あ、でも、退学とかなるもんなんですか?」
「そうじゃない?去年そうだったでしょ。そしたらどうすんの」
「適当に暮らしますよ。バイトしてるので金はあります」
「女子高生が金って言うのやだな」
「別にいいじゃないですか。まぁでも、実際退学なんかなったら死ぬ気がします」
「佐々木さんが死ぬかもって言うとリアルだからやだ」


渋谷先生が腕に力を込めてくる。
振り払わなくてはいけないと頭の中では分かっているのに、背中に感じる心地いい体温がそれを許さない。


かなうことなら、ずっとこうしていたい。
抱きしめ合って、手を繋いで、それで───


私達の平穏を破ったのは、下校時刻を告げるチャイムの音だった。


渋谷先生の体が離れていく。
温もりが消えて、寂しい。


「ほら、時間だよ。てかもう一時間経ったわけ?信じられない」
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