ミルクティーの音色
仲のいい友達はいないし、先生だって。
いや、待て。先生?
でも、渋谷先生にだって家の話はしていないはず。じゃあ、どうして?


「佐々木さん、よく渋谷先生と話してるでしょう?どうしてなのかなって思って、渋谷先生に聞いたら、お家で困ってるって聞いて」


自信がなくなってきたのか、最後の方は声が小さくて何を言っているのか聞き取れなかった。


渋谷先生と話しているのは事実だ。現に毎日音楽室に通い詰めているし。
今重要なのはそこの内容なのだろう。
町田先生は私が渋谷先生に相談をしていると思っているらしい。
実際そんなことはなく、他愛もない話をするばかりなのに。


そうなると、渋谷先生は嘘をついたことになる。
あくまでも相談に乗っているだけだと。
いかがわしいことはなにも、していないと。


───だったら、私もその嘘に乗るしかないじゃないか。


「そうです。ちょっと、家で色々あって。話せそうなのが渋谷先生しか思いつかなくて、相談乗って貰ってて」
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