ミルクティーの音色
きっと、私の中のなにかが、恐れているんだと思う。
渋谷先生に、言ってしまって良いのかと。
その反面、他のなにかは、早く言ってしまえと私にささやきかけている。


もうこれ以上ない恥はさらした。
死にたいと言ったし、弱みという弱みは握られている。
ならもう、いいのか。


「助けてください」


震えていながらも、はっきりとした声で私は言った。
今まで私は、渋谷先生に救われてばかりだった。
手を差し伸べてもらうばかりだった。


これからもずっとそうやっていくんだろうと、心のどこかで思っていた。
私は弱くない。偶然渋谷先生が手を差し伸べてくれただけで、自分から助けて、とむせび泣くようなことはしないと。
私が私に突きつけた、矜持。


それを今、私は折った。
紛れもない、自分自身の手で。


「助けてって、なに、どういうこと」


私が一通りのことを話し終えると、渋谷先生は顔をしかめた。
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