ミルクティーの音色


5


「一緒にいてくれますか。ずっと」


隣で黄昏れる佐々木さんが、か細くも力強い声で言ってきた。
か細さと力強さは共存しないのかもしれない。
矛盾が生じているかもしれない。


でも、今の佐々木さんの声は、か細い中にはっきりとした意思が感じられるような、力強い声だった。


佐々木さんとよく話すようになって、もうすぐで一ヶ月。
この短期間で、佐々木さんは変わったと思う。


本人はきっと気づいていない。
むしろ、変わっていないと思い込んでいるんだろう。


でも、俺には分かるんだよ。


よく笑うようになった。
ころころと表情を変えるようになった。
その時折、悲しげな表情を浮かべている。


怖いんだろう、きっと。
ふたりだけの時間が、終わってしまうことが。
自分が、変わってしまうことが。


俺はそれすらも受け止めてあげたい。
佐々木さんが抱えている怖さすら掬い取って、やさしく抱きしめてあげたい。
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