ミルクティーの音色
「うん。佐々木さんが、一緒にいたいって思ってくれるなら」


佐々木さんは下唇を噛んだ。
涙でも堪えているんだろうか。


泣いてもいいよ。涙の理由を、俺のせいにしたっていい。
泣きたいときは泣けばいい。


それでも佐々木さんは泣かなかった。
改めて表情を見て、ようやく理解した。


佐々木さんは、幸せを噛みしめていたんだろう。
抱え込んだと同時に手からすり抜けていってしまいそうなほどに儚くて、離したくなくて。
そんな幸せを、佐々木さんは噛みしめていた。


俺が、その幸せを掴ませたんだ。
ずっと手の届かないところにあったそれを、俺が引き寄せて佐々木さんに渡した。


重くなかっただろうか。
今まで背負ってこなかった幸せという荷物は、佐々木さんにとって負荷にならないだろうか。


ぎりぎりの縁で持ちこたえていたような佐々木さんには、重くないだろうか。


どちらかからともなく、指が絡まる。
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