ミルクティーの音色
それを即座に渋谷先生に止められて、地面に引き戻される。
後ろから抱きしめられるような形になって、渋谷先生の息が耳にかかる。


先生は、甘くて優しい、ミルクティーみたいな香りがした。


「先生……?」

「先生、じゃないでしょ。なにしてんの馬鹿」


体が離れて、真正面から渋谷先生に見つめられた。
やっぱり、綺麗な顔。


「ねぇ、死にたいの?」


甘ったるいのに、透き通ったような声。
私の中に溶け込むように入ってきて、絡みついて離れない。


「……はい。死にたい、です」


先生は笑うと、私の手を取った。
クリームでもすり込むように、するりと撫でる。


「死にたいなんて、言わないでよ。佐々木さんの生きる意味に、俺がなってあげるから」


何かを慈しむような表情を浮かべて、先生は私を見つめている。


どうして、そんなことを言うんだろう。
先生にとって、私はただの生徒だ。
不特定多数の中の一でしかなくて、大して興味がない存在のはずだ。
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