ミルクティーの音色

椅子に座って、机に頬杖をつきながら旋律に耳を傾けるのが好きだ。
眠気に誘われたりもするけれど、それも含めて。


渋谷先生が一曲弾き終えて、私は全力で拍手を送る。
ピアノを弾いているときの渋谷先生は、とっても楽しそうな顔をしている。
溢れんばかりの笑顔を浮かべていて、指先が跳ねるように動いて。


───まるで、魔法使いみたい。


「先生、私もピアノやってみたいです」

「お。いいよ、教えてあげる。こっち来て」


ひとつの長椅子に二人で座る。
今にも肩が当たりそうな距離感に、くすりと笑った。


「まず姿勢、大事だから。ちょっと浅く座って、足はしっかり地面につけて」

「はい、了解です」


言われたとおりに姿勢を直して、鍵盤に指を置いてみる。
ピアノには全くもって触れたことがないから、隅から隅まで分からない。


「そんな身体強張んなくていいから。ほらもっと、力抜いて」