ミルクティーの音色
母親に見上げられる。頼み込まれる。
もう何年もの間、何回も繰り返されてきたこの構図に、私はまだ慣れることが出来ない。


普通の親だったら、愛しみを込めた瞳で私を見下ろしてくれるんだろう。
私も同じように見つめ返して、そしたらきっと、抱きしめてくれて───。


どうしてなんだろう。
同じ世界で、同じように生まれているはずなのに。
少し運が悪かっただけで、大きく差が開いてしまう。


「四人って、遥は?いいって言ってるの?」

「言ってくれたよ、楽しそうって。遥も中学生になったし、やっぱり父親がいた方がいいかなって」


───どうして。
腹の底で、抑えていたはずの怒りがふつふつと沸いてくる。


私はもう高校二年生で、進路だとか将来だとか、考え始める時期のはずだ。
中学生の時、私が行きたいと言った高校は母親に却下された。
理由は単純。金がないから、だそうだ。


私が中学生の時に、父親がいたら何か変わっていたのだろうか。
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