ミルクティーの音色
「うん、分かった。大丈夫だよ、ほら、新しいお父さんも来てくれるしね」


ありがとう、と薄っぺらい感謝を言い残して、母親は部屋を出ていった。
私は力が抜けたようにベッドに倒れ込む。


やっと言えた。
母親に初めて金を渡した十四歳の頃から、ずっと言いたかった言葉を。


スカートのポケットに入れていた、携帯が震えた。
何だろうと思って確認すると、渋谷先生からの電話だった。


渋谷先生のお家に泊まったあの日、一応ということで連絡先を交換した。
教師と生徒が連絡先なんて、と思ったものの、頼れる人がいるという安心感には抗えなかった。
時々連絡が来て、他愛もないような会話を交わしたりもしている。


「もしもし。渋谷先生?」

『あ、佐々木さん。よかった、違う人にかけたらどうしようかと思った』

「大丈夫です、間違えてないですよ。どうしたんですか、電話なんて」


寝転んでいた身体を起こし、ベッドの上で体育座りをした。
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