ミルクティーの音色
足を抱えて、膝に顔を乗せる。


『いや、特に理由はないんだけど。ちょっと声が聞きたくて』


瞬間、顔を膝に埋めた。
声にならない声が漏れる。


『え、佐々木さん?何か変な声聞こえるけど。大丈夫?』

「全然大丈夫じゃないです」

『うそ、ごめん。俺に出来ることある?』

「これ以上苦しくさせないでください」

『苦しいの?えっと、そういう時ってどうしたらいいんだっけ』

「先生のせいです」

『俺のせい?』


どこまでも渋谷先生は鈍感なようだ。
携帯から慌てたような渋谷先生の声が聞こえる。


「もう、先生鈍感すぎますって」

『え、そう?俺そんな鈍感かな』

「鈍感にもほどがあります」


鈍感だという自覚はなかったらしい。
周りの人間に指摘されることはなかったのだろうか。


「あ、そうだ。先生のお陰で、母親に言いたかったことが言えたんです」

『よかったじゃん。でも俺何もしてないよ』

「先生と出会って、大事なことに気づけたって言うか……改めて、先生と出会えてよかったって思ったんです」
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