ミルクティーの音色
言った後、自分でも顔が赤くなっているだろうなと思った。
お互いの顔を見ていない電話越しとはいえど、直球過ぎただろうか。


『俺も、佐々木さんと会えて良かったって思ってるよ』


───私より、渋谷先生の方が何枚も上手だったみたいだ。


「……ずるいです」

『なにが?まぁなんでもいいけど』


電話越しだと渋谷先生の声が少しだけ低く聞こえて、いつもと同じような会話でも胸が高鳴ってしまう。


『じゃあ、また明日。待ってる』

「はい。また明日」


寂しげな音色が携帯から流れる。
それと同時に、私の身体はベッドに戻った。


明日も渋谷先生と一緒にいられる。
今日と同じように、渋谷先生にピアノを教えて貰おう。


いつかふたりで、連弾というものをやってみたい。
とはいえ私は未経験だ。
たった一曲ですら弾けないのに、連弾なんて夢を見すぎだろうか。


でも、夢を見すぎであったとしても。
見れる夢なら、追いかけられる夢なのであれば。
< 81 / 214 >

この作品をシェア

pagetop