ミルクティーの音色
私はその夢を、必死に追いかけたい。
たかがピアノ、されどピアノ。
私にとっては、大きな夢だ。


もうひとつ、私が抱いている夢があった。
渋谷先生と二人でピアノを弾くことよりも、もっともっと大きい夢が。
私はクローゼットの中からノートパソコンを取り出すと、電源を入れてソフトを開いた。


そこには文字が大量に並んでいる。
私のもう一つの夢は、自分だけの小説を作ることだ。


自分の小説を、本という形で世に出したいとは思わない。
世に出せるような、美しいものではないから。


美しくなくても、荒削りでも、自分のために小説を書きたい。
自分が、自分のために、自分を救えるような物語を紡ぎたい。


もし完成したら、見てもらいたい人がいる。
きっとその人なら、どんな文章であろうと、最後まで読んでくれるはず。


私はマウスを動かすと、左ボタンを二回クリックした。


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